合田道人

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汽車ポッポ

作詞:冨原薫 作曲:草川信(昭和20年発表)

汽車ポッポ

 この歌、昭和20年の戦争終了の年の発表になっていますが、実は戦中からよく歌われていました歌です。ただし詩が違うのです。タイトルも違っていました。この歌は最初、「兵隊さんの汽車」といいました。

 歌詩も、♪汽車汽車ポッポ ポッポ シュッポ シュッポ シュッポッポ……。ここまでは一緒で、その後が、♪兵隊さんを乗せて シュッポ シュッポ シュッポッポ……、つまり出征兵士を送る歌だったんですね。今では明るい汽車の旅の歌ですが、ほんとうはとても悲しい歌だったのです。

 この歌を戦時中に毎日毎日、NHKのラジオで歌ったのがいまや“童謡界の重鎮”である川田正子さんです。しかし昭和20(1945)年8月15日、唐突に戦争が終わります。

 その年暮れ、敗戦国民に希望を与えたいという理由の元、「紅白歌合戦」の原型に当たる「紅白音楽試合」が放送されました。音楽試合というぐらいですから、歌だけではなく器楽演奏や新内、民謡、歌曲、童謡など各ジャンルの第一人者たちが集う歌の祭典でした。当時11歳だった川田正子さんにも当然、出場要請が来ました。歌う歌はもちろん十八番(おはこ)の「兵隊さんの汽車」でした。
 ところが珍事が発生します。

 当時、敗戦国だった日本はアメリカの統治下でした。放送内容のひとつひとつ、放送で流す曲もチェックされるのです。そこで「敗戦国民が何ごとだ!」と「兵隊さんの汽車」にNGが出てしまうのです。実は、♪走れ 走れ 走れ……の部分が、♪バンザイ バンザイ バンザイ……という歌詩だったのです。「日本よ戦争に負けるな!」という意味が込められていたわけです。

 これではさすがに、歌うわけには行きません。それも放送本番の4日前のことだったのです。一時は「お山の杉の子」など違う歌も検討されましたが、この歌も歌詩にも難点がありました。♪何の負けるか 今に見ろ 大きくなって 国のため お役に立ってみせまする……ですからね。

と、いうことで急遽「兵隊さんの汽車」の作詩家、冨原薫の元にNHKのプロデューサーが趣き、新しい歌詩の制作を依頼したのです。そして新たに生まれ変わった現在の「汽車ポッポ」が「紅白」で初披露され、子供たちの愛唱歌になってゆくのです。

この謎解きが詳しく載っている本とCD

四六版「こんなに不思議、こんなに哀しい 童謡の謎2」(1,500円+税)
文庫本「案外知らずに歌ってた 童謡の謎2」(税込600円)
「童謡のなぞとき 2」(税込1,500円)