合田道人

童謡謎解きマップ

合田道人が多くの童謡の謎を解きます

かなりや

作詞:西條十八 作曲:成田為三(大正7年発表)

東京・上野公園 大正7年に詩が発表され、翌年に曲がつけられた童謡最初の歌が、この歌です、と講演で言うと、よく「えっ? その前に子供の歌はなかったのか? 確か「荒城の月」などは明治時代の歌のはずでは?」という質問がとんできます。

 確かにそのとおり。でも「荒城の月」は童謡ではないのですよ。あれは唱歌というのです。

 実は子供の歌とよばれるものは、厳密にいえば童謡だけではなく、唱歌、それにわらべ歌、たとえば「ずいずいずっころばし」とか「がごめかごめ」とか、江戸時代から歌われ伝わったとされるもの、それに手遊び歌や数え歌、子供が一番最初に耳にすると思われる ♪ねんねんころりよ おころりよ……などの子守唄などたくさんあります。それにクリスマスソングだって子供の歌だし、「ちょうちょ」や「むすんでひらいて」のような外国曲も、アニメの主題歌、「おかあさんといっしょ」や「みんなのうた」などで歌われる新作のことも本来、童謡とはいわないのです。

 専門家の先生たちは、「大きな古時計」は外国曲だから童謡ではない……、などとおっしゃいますが、私は童謡の“童”は、わらべ、つまり“こども”、“謡” は“うた”なのだから、それらすべてを「童謡」といってわしつかえないと思っています。

 唱歌とは、明治時代に学制がスタートして始まった際の音楽の授業そのものをよぶのが本当です。音楽の時間が唱歌の時間といわれていた。しばらくして歌を習うようになって、その歌も唱歌とよばれるようになった。そのあたりは今度発売する新著に詳しく書きますので……。でも唱歌は、♪春高楼の花の宴……など子供にとって意味が取りずらい、難しい歌が多かった。そこで子供にも分かる詩で子供を教育しようと、童謡運動がはじまったわけです。

 でもその一番最初の童謡が、♪歌を忘れたかなりやは 後ろの山に捨てましょか……やら、♪柳のむちでぶちましょうか……など、ひどく残酷な歌なのです。どうしてかが、謎です。

 人間はスランプに陥ることが必ずある。子供でも大人でも、かなりやでも、一生懸命やっているけれども、うまく結果が出ないことが必ずあります。だからといって、“使いものにならん”と後ろの山に捨てたり、むちでぶつことはせずに、やさしく考えさせてあげる時間をとってあげましょう。
きっと、♪忘れた歌を 思い出す……はずです。そんなやさしい心根を持てる子供になりましょう。この歌は一時期、かなりやをぶつだなんてと、愛護協会からクレームがついたそうです。でも本当の意味を知ったら、童謡はじめてのこの歌こそ今、大切な歌はないはずです。私も先年、思いを込めてレコーディングしました。

この謎解きが入っている本とCD

四六版「こんなに不思議、こんなに哀しい 童謡の謎2」(1,500円+税)
文庫本「案外知らずに歌ってた 童謡の謎2」(税込み600円)
「童謡のなぞとき 2」(税込1,500円)