合田道人

童謡謎解きマップ

合田道人が多くの童謡の謎を解きます

月の沙漠

作詞:加藤まさを 作曲:佐々木すぐる(大正12年発表)

千葉・御宿海岸「月の沙漠公園」 「月の砂漠」ではなく「月の沙漠」なのです。えっ? 今はよくこの歌の沙漠の“さ” を“砂”と当てているようですが、この歌に限っては“砂”ではなく“沙”、沙汰の“沙”がほんとうなのです。これはこの「月の沙漠」の舞台が、アラブ砂漠でもゴビ砂漠でもなく、なんと日本のそれも千葉県は御宿海岸を歌った歌として生きているからでもあるのです。

 “砂”は、砂山や砂場の、ただ“すな”という意味なのですが、この“沙”になると、すなはま、つまり海辺の砂浜の意味になります。“沙”にはそういえばシ(さんずい)がついていますからね。シ(さんずい)はご存知のとおり、水に関係しているわけですから。

 作詩した加藤まさをは、若い時分に肺結核を患い御宿海岸に静養に来ています。当時肺結核は、不治の病いとよばれていました。

 加藤はぼんやりと海に向かって浜辺に座っていたとき、急に目の前の砂浜が砂丘になり月に向かってさすらう王子と姫が浮かんできたというのです。昔、人は死んだあとに月にゆくいくという考えがありました。♪ふたりはどこへ 行くのでしょう……。この歌の全体に流れる悲壮感は、死への旅立ちでもあったのです。

 「徹子の部屋」に出演させていただいたとき、徹子さんが「ほんとうに、どこに行くのでしょうと、私も子供のときから思っていたんですよ」。

 ここにはその病気から逃避したい気持ちが表されていました。そしてなんともうひとつ、彼を悩ませる問題がありました。加藤には許されない恋の相手がいたのです。さらに子供までいたのです。しかしふたりの結婚は許されず、子供はのちに加藤家に引き取られたということです。

 歌の中にらくだが、出てきます。らくだは、背中にこぶを持つ動物です。宗教的に言うと、苦労を背負って人生を歩いて行くということをたとえたのでした。現実からの逃避が死へのあこがれになっていった、そんな悲しい童謡です。

この謎解きが入っている本とCD

四六版「こんなに不思議、こんなに哀しい 童謡の謎2」(1,500円+税)
文庫本「案外知らずに歌ってた 童謡の謎2」(税込600円)
「童謡のなぞとき 2」(税込1,500円)