合田道人

童謡謎解きマップ

合田道人が多くの童謡の謎を解きます

春の小川

作詞:高野辰之 作曲:岡野貞一(大正10年発表)

東京代々木 愛娘と合田道人 これぞ「童謡の謎」の本を書くたきっかけになった歌です。

 長女が小1のときに「学校の夏休みの自由研究のために、どこかに連れてって!」と言ったんです。昆虫採集するような場所に行くなら泊りがけになるだろうし、ディズニーランド行くのもなんだから、「ああそうだ。確か自宅の近くに詩人の高野辰之の住居跡があったな〜」と思い出しました。

 高野辰之というのは、実に今なお歌われる童謡唱歌をたくさん作った人です。

 たとえば♪うさぎ追いし かの山……の「ふるさと」だったり、♪白地に赤く……の「日の丸の旗」だったり、♪秋の夕日に照る山……「もみじ」だったり、「春が来た」「おぼろ月夜」……などなど。そんな中に「春の小川」があります。住居跡からさらに歩いて7〜8分のところにこの歌の碑がありました。

 そこで娘。「ねえ、パパ小川ってどこにあるの?」「“春の小川”だから、春になったら流れるの?」と、まあそんな質問だったんです。確かに小川は近くにはありません。後ろに小田急線の線路があって、電車が走ってゆきます。

 でも童謡の歌碑というのは、歌のテーマがその場所に関係なくても、たとえば作家がそこの出身だったり、住んでいたりしたことがあったりしても建てられることも多いので、ここに小川はなくってもあまり不思議ではありません。 

 けれど一番、私たち父娘を驚かせたのは、その碑に刻まれている歌詩だったのです。♪春の小川は さらさら流る……。「あれっ? ♪春の小川は さらさら行くよ……じゃなかったけ? 文(娘の名前)、今学校で“さらさら流る”って習うの?」と私。「いいや、♪さらさら行くよ……だよ」。

 変!? ナニこれ? 間違ってるんじゃないの? 童謡の謎解きのスタートでした。

 調べていくうちに最初、この歌が発表されたときはこの歌詩だった。しかし戦後になって、子供たちの言葉の中に、小川は流れるけれど“流る”という言い方はされない! として、改正されて今の形になったのです。「徹子の部屋」に出演させていただいたとき、徹子さんが、「でもね、小川は流れるもので行くものではない、またなるほど! と思ったものです。もうひとつ驚いたのは、実際ここに小川があったということでした。ここは東京渋谷区代々木。東京オリンピックの選手村をつくるために、ここにあった川を埋め立てたというのが真相だったのです。

この謎解きが詳しく載っている本

「こんなに深い意味だった 童謡の謎3」(1,500円+税)