合田道人

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「女のためいき」(2004年2月第19号より)

 「紅白」史上、初出場以来連続出場回数をのばしているのが昨年で36年連続出場の森進一だ。40回目の北島三郎は、昭和61(1986)年に一度だけ出場していないから、森が記録ホルダーなのである。

 その森が「紅白」で歌っていないのが、昭和41(66)年のデビュー曲「女のためいき」。その頃歌手は、まだまだ声が美しいのが当たり前の時代だった。そんな中で悪声の森がデビューする。ハスキー・ボイスなどという言葉はまだなかった。珍しさも手伝って幸先(さいさき)よく大ヒットしたものの、世間の声は"どうせ一発で消えるだろう"という冷たい声。

 「紅白」にも新人賞にも届かなかった。その予想は的中し、翌年にはヒット曲ゼロ。再び認められようとする期待と焦燥、"負けてたまるか、見返してやる"の反骨精神こそが、悪声を心の叫び、ふりしぼるような絶唱へと変えていったのである。それを人々が放っておけなかった。心に沁みる歌だった。

 翌43(68)年、「花と蝶」で森は「紅白」に初出場。翌年には22歳、2回目の出場ながら「港町ブルース」で美空ひばりを相手に堂々とトリをつとめ、新しい「紅白」への道標(みちしるべ)を築く。そしてそれから36年、沁みる歌声で「紅白」を見つめ支えてきたのである。

 来年でデビュー40年、ここらで彼の原点ともいうべき「女のためいき」を「紅白」で聞きたいと思っているのは、私一人ではなかろう。