合田道人

連載記事

雑誌の連載記事のご紹介

「青いカナリヤ」(2004年5月第22号より)

 先日、雪村いづみの「ゴールデン☆ベスト」がソニーから私の解説で発売になった。今は亡き美空ひばり、江利チエミと共に三人娘のひとりとして長きに渡り活躍し、昨年はデビュー50周年の記念リサイタルが各地で大盛況を収めた。

 そのいづみ、今回のCDにも当然収録されている彼女の代表的一曲、明るく楽しくいづみのイメージぴったりのあの「青いカナリヤ」を「紅白」では披露していないのだ。

 発売された昭和29年、「紅白」は5回目、前年「思い出のワルツ」「ジャンバラヤ」でデビューした彼女は、早くもこの年、17歳で「紅白」に選ばれた。遅れてひばりもこの回から出場しているから、三人娘がはじめて全員顔を出した記念すべき「紅白」でもある。

 だがいづみが歌った歌は「青いカナリヤ」ではなく、「オウ・マイ・パパ」だったのだ。実はこの「オウ・マイ・パパ」のB面が「青いカナリヤ」だったのである。

 デビュー曲と同じようにいづみはこれも、両面共にヒット曲に育てていたのだ。

 「オウ・マイ・パパ」を歌ったのには、こんな理由もあった。いづみは9歳のときに父親と死に別れ、家族のために、生活のために、歌手の道を歩んでいたのだ。そのデビュー日は父の命日でもあった。デビュー2年目に出会ったこの歌を歌うたび、彼女の気持ちが高ぶった。やさしい父の面影がいつも目の前にちらついた。

 「紅白」初出場の感動と、目をつぶると浮かんでくる父の姿。紅組司会の福士夏江アナウンサーはこんな言葉でいづみを紹介した。「天国のお父様に届くように歌います」。

 心がこもったその歌声は全国の視聴者だけではなく審査員の涙まで誘ったという記録も残されている。